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なぜライフプランシミュレーションが必要なのか

  • 執筆者の写真: 根本 寛朗
    根本 寛朗
  • 12 時間前
  • 読了時間: 6分
家族の後ろ姿

――資産形成の前に描くべき「人生の設計図」


「将来のお金がなんとなく不安」

「老後資金は2,000万円で足りるのだろうか」

「投資を始めたけれど、このままでいいのか分からない」


こうした声は、資産形成の現場で非常に多く聞かれます。


しかし、その不安の多くは“お金が足りないこと”そのものではなく、自分の将来像が数値で整理されていないことから生まれています。

暗闇をライトなしで歩くのが怖いのと同じです。足元を照らすために必要なもの、それが「ライフプランシミュレーション」です。



ライフプランとは「人生の長期資金計画」


企業経営では、事業計画や資金繰り予測を立てずに投資判断を行うことはありません。


一方で個人の人生ではどうでしょうか。


住宅購入、教育方針、転職、独立、資産運用――人生の大きな意思決定を、感覚や周囲の情報だけで行っていないでしょうか。


ライフプランシミュレーションとは、将来の収入・支出・資産残高を時系列で可視化することです。

具体的には、


  • 収入: 現在および将来の昇給見込み、退職金、公的年金

  • 支出: 基本生活費、住居費、お子さまの教育費、イベント費

  • 資産: 現預金、積立投資、保険の解約返戻金など


これらを統合し、人生全体のキャッシュフローを設計します。

言い換えれば、人生を一つの経営体と捉えた長期資金戦略の策定です。



不安の正体は「情報不足」か「構造問題」


将来不安は、大きく2つに分かれます。


① 情報不足による不安


「老後にいくら必要なのか」

「教育費の総額は?」

「年金受給額の目安がわからない」


この場合、数値化すると「思っていたより足りている」と分かり、今の生活を安心して楽しめるようになるケースも少なくありません。


② 構造的な赤字リスク


一方で、特定の年代に資金不足が生じる構造になっているケースもあります。


  • 住宅ローン完済と教育費のピークが重なっている

  • 自営業で、会社員に比べ老後の公的年金が極端に少ない

  • インフレ(物価上昇)による購買力の低下を想定していない


これらは感覚では把握できません。シミュレーションを行って初めて明らかになります。

重要なのは、「赤字があるかどうか」ではなく、「早期に把握できるかどうか」です。

早期に分かれば、積立額の見直し、支出構造の調整、働き方の変更など、打てる手は数多く存在します。



資産形成は“商品選び”から始めてはいけない


近年、NISAやiDeCoの普及により投資を始める方が増えています。制度は有効な仕組みです。

しかし問題は、「目的なき投資」です。


  • 毎月いくら積み立てればよいのか

  • 自分はどの程度のマイナスに耐えられるのか(リスク許容度)

  • いつ、何のために取り崩すのか


これらが曖昧なまま運用を始めると、


  • 必要以上にリスクを取りすぎる

  • 途中の価格変動で不安になりやめてしまう

  • 本来使うべきタイミングで使えない


といった事態に陥ります。

金融商品は“手段”です。ライフプランは“目的と許容範囲”を定める作業です。

順序を間違えると、戦略なき戦術になります。



万が一を想定しない計画は、計画とは言えない


ライフプランは、順調な未来だけを描くものではありません。


人生には不確実性があります。


  • 世帯主の死亡

  • 長期療養や就業不能

  • 収入減少・想定外の支出

  • 運用環境の悪化


これらは、確率は低くてもゼロではありません。


仮に、毎月の積立投資で老後資金が十分確保できる設計だったとしても、途中で収入が止まれば計画は崩れます。


そのためライフプランでは、


① 平常時のキャッシュフロー

② リスク発生時のキャッシュフロー


の両方を検証します。

ここで重要なのは、不安を煽ることではありません。過度な楽観も、過度な悲観も排除することです。



守りと攻めはセットで設計する


資産形成というと「増やすこと」に注目が集まりがちです。

しかし本質は、

破綻確率を下げながら、合理的に成長させること

にあります。


  • 生活防衛資金は十分か

  • 社会保障でどこまでカバーされるか

  • 不足部分は保険か、資産か、どちらで補うべきか


土台が不安定なままリスク資産を増やすことは、基礎工事をせずに建物を高くするようなものです。

ライフプランシミュレーションは、その土台の強度を測る工程でもあります。



自分では気づけない“前提”が未来を左右する


ライフプランは、単なる計算作業ではありません。結果を左右するのは「どの前提を置くか」です。


  • 昇給率をどう見積もるか

  • 教育方針をどう想定するか

  • 運用利回りをどの水準で見るか

  • 年金受給開始年齢をどう考えるか


多くの人は、無意識の前提を置いています。


そしてその前提こそが、将来の資産残高を大きく左右します。


「自分はリスクを取れると思っている」

「まだ若いから大丈夫だと思っている」

「保険は入っていれば安心だと思っている」


こうした感覚は自然です。


しかし、数値に落とし込んで検証すると、初めて客観的な判断が可能になります。



私たちFPの役割


私たちの役割は、商品を提案することではありません。


前提を問い直し、構造を整理し、選択肢を提示することです。


第三者だからこそ、


  • キャッシュフローの偏り

  • リスクの集中・保障の重複や不足

  • 資産配分の歪み


といった構造上の課題を可視化できます。


人生の正解を決めるのは、ご本人です。


私たちは、「その選択が将来にどう影響するか」を数値で示し、意思決定を支える存在です。



ライフプランは“未来を当てる”ものではない


ライフプランシミュレーションは、未来を予言するものではありません。

未来は必ず変わります。

結婚、出産、転職、独立、制度改正。前提が変われば、最適解も変わります。

だからこそ重要なのは、いつでも修正できる状態にしておくことです。

ライフプランは、一度作って終わりではなく、人生とともにアップデートする設計図です。



数字は、人生の選択肢を広げる


ライフプランの本質的な価値は、不安をゼロにすることではありません。

数字があることで、


  • 転職に挑戦できる

  • 教育方針を主体的に選べる

  • 働き方を柔軟に設計できる

  • 早期リタイアの可能性を検討できる


つまり、選択の自由度が高まります。


感覚ではなく、数値に基づいて判断できる状態。それがライフプランシミュレーションの最大の意義です。



まとめ


資産形成の第一歩は、投資商品を選ぶことでも、保険を見直すことでもありません。

まずは、自分の人生のキャッシュフローを可視化すること。

順調な未来も、万が一も含めて設計することで、資産形成は“なんとなくの不安対策”から“戦略的な意思決定”へと変わります。

そして、自分では気づきにくい前提や構造を整理し、選択肢を広げる伴走者がいることで、その設計はより現実的で、持続可能なものになります。


次回は、具体的なケーススタディを通じて、ライフプランシミュレーションが実際の意思決定をどのように変えるのかを見ていきます。

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