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コア・サテライト戦略は個人投資家に必要か

  • 執筆者の写真: 根本 寛朗
    根本 寛朗
  • 17 時間前
  • 読了時間: 9分

コア・サテライト戦略は個人投資家に必要か

「コア・サテライト戦略」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

資産運用では比較的よく使われる考え方で、保有資産を「コア(中核)」と「サテライト(衛星)」に分けて運用します。

例えば、

コア80%:全世界株式などのインデックスファンド サテライト20%:アクティブファンドや特定地域・テーマへの投資

といった形です。

大和アセットマネジメントでは、コア部分で長期的に安定したリターンを目指し、サテライト部分ではコアよりもリスクを取って、より高いリターンを目指す戦略と説明しています。

考え方としては分かりやすいです。

ただ私は、

すべての個人投資家がサテライトを持つ必要はない

と思っています。

むしろサテライトを加えるのであれば、「何となくリターンが上がりそうだから」ではなく、なぜそのリスクを追加するのかを説明できることの方が重要です。

そもそも「コア」は何を指すのか

まず、コア=全世界株式とは限りません。

例えば30代で、運用期間が長く、大きな価格変動にも耐えられる人なら、広く分散された世界株式をコアにする考え方はあります。

一方で、数年後に使う予定の資金まで含めて全世界株式100%をコアとするのは、同じ意味ではありません。

コアとは、

「値動きが小さい商品」ではなく、自分の資産運用の目的やリスク許容度に照らして、中長期的に保有し続けるポートフォリオの中核部分

と考えた方がよいと思っています。

金融庁も、資産形成では家計管理やライフプランニングを前提に、「長期・積立・分散」を基本的な考え方として示しています。複数の資産や地域へ分散することで、特定のリスクから受ける影響を抑える考え方です。

つまり、コアを考える前に、

「何のためのお金なのか」

「いつ使うのか」

「どこまで下落しても保有を続けられるのか」

を決める必要があります。

コアだけでも資産形成は成立する

私はここをかなり重要だと思っています。

広く分散された低コストのインデックスファンドなどをコアとして、長期間保有する。

これだけでも資産形成は十分成立します。

それなのに、

「コア・サテライト戦略が良いと聞いたから」

という理由だけで、

NASDAQ、インド株、半導体、AI、高配当株、小型株、アクティブファンド……

と次々に商品を追加していく。

気付いたら10本以上の投資信託を持っていて、

自分のポートフォリオが何に投資しているのか分からない。

これは実際によくあります。

商品数が増えることと、分散されることは同じではありません。

例えば、全世界株式をコアに持ちながらNASDAQ100や米国半導体株を追加すれば、商品数は増えますが、米国大型グロース株へのエクスポージャーはむしろ高くなる可能性があります。

ですから、

サテライトを追加する=分散

とは限りません。

むしろ意図的に特定のリスクを増やすケースの方が多いと思います。

NISAの「つみたて投資枠=コア」「成長投資枠=サテライト」でもない

日本ではNISAとの関係も整理しておきたいところです。

つみたて投資枠ではインデックスファンドを積み立て、成長投資枠では個別株やアクティブファンドを買う。

そのため、

つみたて投資枠=コア成長投資枠=サテライト

と考えたくなるかもしれません。

しかし、私はこの2つは分けて考えた方がよいと思っています。

NISAの投資枠は「制度上の区分」。

コア・サテライトは「ポートフォリオ上の役割」です。

成長投資枠でも、コアとなるインデックスファンドを購入することはできます。

野村アセットマネジメントも、成長投資枠をサテライトだけに使うのではなく、コア資産の比率を増やす目的にも活用できると説明しています。

「成長投資枠だから攻める」のではなく、

自分のポートフォリオ全体に何が不足しているのか

から考えた方がよいでしょう。

サテライト20%だから「リスクも20%」ではない

ここから少し踏み込みます。

例えば、

コア80%サテライト20%

というポートフォリオなら、

「サテライトは20%しかないので、それほどリスクは増えない」

と思うかもしれません。

しかし、投資金額の割合とリスクへの寄与度は同じではありません。

例えばコアをベンチマークB、サテライトをSとして、単純化して、

P=0.8B+0.2S

というポートフォリオを考えます。

ベンチマークBとの差は、

P-B=0.2(S-B)

です。

したがって、サテライトのベンチマークに対するTracking Errorが25%なら、その他の条件を単純化すれば、ポートフォリオ全体のActive Riskは概ね、

25%×20%=5%

となります。

トラッキングエラー(TE)とは、ポートフォリオとベンチマークの収益率の差、つまり超過収益率の標準偏差です。GPIFや企業年金連合会でも、ベンチマークからの乖離度合いを測るリスク指標として説明されています。

ただし、これはあくまでも単純化した例です。

実際のポートフォリオ全体のリスク寄与度は、サテライトそのもののボラティリティだけでは決まりません。

コアとの相関関係も影響します。

同じ20%でも、

コアとほぼ同じ動きをするサテライト

と、

コアと異なる値動きをするサテライト

では、ポートフォリオ全体への影響は変わります。

つまり、

サテライト比率20%=ポートフォリオリスクの20%

ではありません。

Active Shareを見ると「本当にサテライトなのか」が分かる

サテライトにアクティブファンドを使うのであれば、私はActive Share(アクティブ・シェア)も見たいと思っています。

Active Shareとは、そのファンドの銘柄構成がベンチマークとどの程度違うのかを見る指標です。

ベンチマークと全く同じ銘柄を同じ比率で保有していれば0%。

全く異なれば100%です。

野村アセットマネジメントも、Active Shareをアクティブ運用における「銘柄選択の独自性」を確認する指標として紹介しています。ただし、Active Shareが高ければ運用成績が良いという意味ではない点にも注意が必要です。

例えば、

コア:TOPIXインデックス サテライト:日本株アクティブファンド

という組み合わせを考えます。

サテライトの中身がTOPIXとほとんど同じなら、

「高い信託報酬を払ってまでサテライトとして持つ意味があるのか」

という疑問が出てきます。

逆にActive Shareが高ければ、少なくともコアとは違う銘柄選択をしていることは分かります。

ただし、

違うことと、優れていることは別です。

ここは重要です。

トラッキングエラーだけでなくインフォメーション・レーシオも見る

では、そのサテライトが取ったアクティブリスクに対して、本当に付加価値を生み出しているのか。

そこで使えるのがインフォメーション・レシオ(Information Ratio)です。

計算式は、

インフォメーション・レシオ=ベンチマークに対する超過リターン÷トラッキングエラー

です。

例えば、

超過リターン+2%

トラッキングエラー4%

なら、

インフォメーション・レシオ=0.5

です。

企業年金連合会やGPIFも、ベンチマークに対する超過収益をトラッキングエラーで割り、アクティブ運用の効率性を見る指標として説明しています。

つまりサテライトを見るなら、

「去年20%上がった」

だけではなく、

どれだけベンチマークからリスクを取って、その対価としてどれだけ超過収益を獲得できたか

を見る。

こちらの方が私は重要だと思っています。

「金額」よりRisk Budgetで考えてみる

さらに一段深く考えるなら、私はサテライトをリスク・バジェット(リスク予算/ Risk Budgeting)で考える方法が本質的だと思っています。

例えば、

「サテライトは資産の20%まで」

ではなく、

「ポートフォリオ全体で許容するリスクのうち、どこまでを自分のアクティブな判断に使うのか」

と考えます。

これは機関投資家の世界で使われる考え方ですが、個人投資家にも考え方そのものは応用できます。

ニッセイ基礎研究所の年金ALMに関する資料でも、個別資産のリスク量を単純に合計するのではなく、各資産がポートフォリオ全体のリスクにどの程度影響するかという「リスク寄与」で捉える考え方が説明されています。

例えば、

コアでは世界株式市場全体のリターンを取る。

サテライトでは小型株、バリュー、モメンタム、特定地域、アクティブ運用などを使って、意図的に市場平均と違うリスクを取る。

こう考えると、

「20%だから大丈夫」

ではなく、

その20%によってポートフォリオの性格がどの程度変わるのか

を見ることができます。

サテライトを持つなら「なぜ?」を説明できるか

私はサテライトそのものを否定しているわけではありません。

むしろ、自分なりの投資仮説があるのであれば、サテライトを使うのは面白いと思っています。

例えば、「世界株式を基本としつつ、日本の小型株には市場の非効率性が残っていると考えるので、優秀なアクティブファンドを10%組み入れる」「市場全体をコアで保有しながら、バリューファクターを意図的に追加する」といった考え方です。

この場合には、

何を期待しているのか どのリスクを追加しているのか 何をもって投資仮説が間違っていたと判断するのか

まで決めておくと、単なる「好きな商品集め」になりにくくなります。

一方で、

「最近インド株が上がっているから」

「AIがこれから伸びそうだから」

「高配当株が人気だから」

と追加していくと、サテライトがいつの間にかポートフォリオの中心になってしまうことがあります。

これはコア・サテライト戦略というより、相場のテーマを追いかけている状態です。

個人投資家にコア・サテライト戦略は必要なのか

結論として私は、

明確な投資仮説がなければ、コアだけでも十分

だと思っています。

広く分散されたポートフォリオを低コストで長期間保有する。

これだけでも立派な投資戦略です。

サテライトは必須ではありません。

一方で、

市場平均とは違うリスクを意図的に取りたい。

自分なりの投資仮説を試したい。

アクティブファンドに市場を上回る付加価値を期待している。

個別株投資そのものを楽しみたい。

という明確な理由があるなら、サテライトを組み入れる意味はあります。

また、少額のサテライトで個別株やテーマ投資を楽しむことで、コア資産を頻繁に売買しなくて済むのであれば、行動ファイナンスの面からも意味があるかもしれません。

重要なのは、

「コア80%・サテライト20%にすれば正解」ではない

ということです。

資産配分を考えるときには、金額だけではなく、

どのリスクを、何のために、どの程度追加しているのか。

ここまで考える。

私は、その方がコア・サテライト戦略の本来の使い方に近いと思っています。 〈ご案内とご注意〉 本記事は、経済指標や市場環境の解説を通じて、金融知識の理解を深めていただくことを目的とした情報提供資料であり、特定の金融商品の売買を勧誘、または将来の為替相場を保証するものではありません。 内容は信頼できると考えられる資料に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。実際の資産運用や投資判断にあたっては、ご自身の生活状況やリスク許容度、目的を踏まえ、最新の情報をご確認いただいた上で、最終的にはご自身の責任にてご判断くださいますようお願い申し上げます。

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