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「ここまで払ったからやめられない」は要注意?サンクコスト効果とお金の意思決定

  • 執筆者の写真: 根本 寛朗
    根本 寛朗
  • 2 日前
  • 読了時間: 8分
「ここまで払ったからやめられない」は要注意?サンクコスト効果とお金の意思決定

「ここまでお金を払ったから、やめるのはもったいない」 「長く続けてきたから、今さら変えたくない」 「これだけ時間をかけたのだから、もう少し続けた方がいい」

このように考えた経験はないでしょうか。

もちろん、何かを長く続けること自体が悪いわけではありません。

資産運用も保険も、短期的な損得だけで判断すべきものではなく、継続することに意味があるケースもあります。

一方で、

「これからも続ける価値があるから続ける」のか、 「ここまでお金や時間を使ったから続ける」のか。

この2つは、似ているようで大きく異なります。

過去に使ったお金や時間が、現在の意思決定に影響することを、行動経済学では「サンクコスト効果」という考え方で説明することがあります。

今回は、投資・保険・住宅など、私たちのお金の意思決定にも関係する「サンクコスト効果」について解説します。

サンクコストとは?

サンクコスト(Sunk Cost)とは、日本語では「埋没費用」と呼ばれます。

すでに支払ってしまい、今後どのような意思決定をしても回収することができない費用のことです。

ここでいう費用は、お金だけとは限りません。

時間や労力なども、私たちの判断に影響することがあります。

例えば、仕事で使おうと思い、少し高価なオーダースーツを仕立てたとします。

生地にもこだわり、採寸をして、完成まで時間もかけました。

ところが、その後働き方が変わり、スーツを着る機会がほとんどなくなった。

今の生活では、ほとんど必要ありません。

それでも、

「せっかく高いお金を払ったから」

「オーダーまでしたのだから」

と考え、なかなか手放せないことがあります。

しかし、そのスーツを使い続けても、手放しても、購入時に支払ったお金は戻ってきません。

本来考えるべきなのは、

「いくら払ったか」ではなく、 「今の自分にとって、これからも使う価値があるか」

ということです。

今の生活に合っているなら使えばいい。

合っていないのであれば、売却したり、誰かに譲ったりすることも選択肢になります。

過去に支払った金額が、これからの判断まで決める必要はありません。

このように、すでに回収できないお金や時間に引っ張られて、その後の意思決定まで変わってしまうことを「サンクコスト効果」といいます。

投資でも「ここまで下がったから売れない」は起こる

サンクコスト効果は、投資判断にも影響する可能性があります。

例えば、100万円で購入した金融商品が70万円になったとします。

すると、

「30万円も損しているから、今は売れない」

「せめて100万円に戻るまでは持っていたい」

と考えてしまうことがあります。

損失を確定させたくないという気持ちは、決して不自然なものではありません。

ただし、ここでは一度、

「100万円で買った」という過去の事実と、 「現在70万円の金融商品をこれからも保有するべきか」という判断

を分けて考えることが大切です。

例えば、今その金融商品を保有しておらず、手元に70万円があったとしたら、改めて同じ商品を購入するでしょうか。

「今でも購入したい」と考えるのであれば、保有を継続することには一定の理由があります。

一方、

「今なら別の商品を選ぶ」

と思うのであれば、

「100万円で購入したから」という取得価格だけを理由に保有を続けていないか、一度考えてみてもよいでしょう。

ただし、含み損があるから売却した方がよいという意味ではありません。

長期投資では、市場の下落局面で安易に売却しないことが重要な場合もあります。

税金や手数料、ポートフォリオ全体のバランスなども考える必要があります。

大切なのは、

「損をしているから持ち続ける」のか、「今後も保有する理由があるから持ち続ける」のか。

この違いを意識することです。

保険は「今まで払った保険料」だけで判断しない

保険の見直しでも、サンクコスト効果に近い心理が働くことがあります。

例えば、

「10年間保険料を払ってきたので、今さら見直すのはもったいない」

という考え方です。

毎月1万円を10年間支払っていれば、単純計算で120万円になります。

それだけのお金を支払ってきた契約を見直すとなれば、

「これまで払った保険料が無駄になるのでは」

と感じることもあるでしょう。

しかし、保険を考える際には、

「これまでいくら払ったか」と「これからも必要な保障か」

を分けて考えることが重要です。

加入当時と現在では、状況が変化している可能性があります。

結婚や出産、子どもの独立、住宅購入、転職、収入や金融資産の変化など、ライフステージによって必要な保障は変わります。

そのため、

現在どのようなリスクに備える必要があるのか。

必要保障額はどの程度なのか。

その保障に対して、今後支払う保険料は妥当なのか。

こうした視点から改めて考える必要があります。

ただし、

「過去に支払った保険料はサンクコストだから、保険を解約した方がよい」ということではありません。

保険は、一度解約すると元の状態に戻せない場合があります。

年齢や健康状態によっては、新しい保険に加入できなかったり、条件が付いたりする可能性があります。

また、解約返戻金、予定利率、税務、現在の契約条件などによって、既契約を継続した方がよいケースもあります。

「今まで払ったから続ける」

でも、

「サンクコストだからやめる」

でもなく、

現在の状況とこれからを踏まえて判断することが重要です。

住宅購入でも「せっかく買ったから」に注意

住宅は、人生の中でも特に大きなお金が動くものです。

購入時には物件価格だけではなく、

仲介手数料、登記費用、住宅ローン関連費用、引っ越し費用、家具・家電など、さまざまな費用が発生します。

そのため、

「これだけお金をかけて購入したのだから」

「せっかく買った家だから」

という気持ちが強くなることがあります。

しかし、住宅購入後にライフプランが変わることもあります。

転職によって勤務地が変わる。

家族構成が変わる。 子どもの進学先が変わる。

親の介護が必要になる。

こうした変化によって、購入時には最適だった住宅が、現在の生活には合わなくなることもあります。

その場合、

「購入時にこれだけお金をかけたから」

という理由だけで住み続けるのではなく、

「これからの人生に、この住宅が合っているのか」

という視点で考えることも必要です。

もちろん、売却すればよいという単純な話ではありません。

住宅ローン残高、現在の売却価格、売却費用、住み替え費用、将来の住居費などを含めて判断する必要があります。

サンクコストに左右されないための質問

では、過去に使ったお金や時間に引っ張られずに判断するには、どうすればよいのでしょうか。

一つの方法として、


「もし今日ゼロから選ぶとしたら、それでも同じ選択をするだろうか?」

と考えてみる方法があります。

投資なら、

「今この金融商品を持っていなかったとして、現在の価格でも購入したいと思うか?」

保険なら、

「今この保険に加入していなかったとして、現在の年齢・家族構成・資産状況でも同じ保障を選ぶか?」

住宅なら、

「今この家に住んでいなかったとして、現在のライフプランでもこの住宅を選ぶか?」

このように考えることで、

「今までいくら使ったか」

から、

「これからどうしたいのか」

へ視点を移しやすくなります。

サンクコストと「これから発生するコスト」は違う

ここで注意したいポイントがあります。

サンクコストを意識することは、

「過去のことはすべて無視して判断すればよい」

という意味ではありません。

例えば保険を解約すれば、保障がなくなります。

新しい保険に加入するのであれば、現在の年齢や健康状態で保険料や加入条件が決まります。

住宅を売却するのであれば、仲介手数料などの売却費用が発生する可能性があります。

投資商品を売却する場合にも、税金や手数料などが発生することがあります。

これらは、

これから意思決定することで発生するコスト

であり、サンクコストとは異なります。

つまり、見るべきなのは、

「過去にいくら払ったか」

ではなく、

「ここから先、それぞれの選択肢を選んだ場合にどうなるのか」

ということです。

「続けること」が悪いわけではない

サンクコスト効果について知ると、

「過去に使ったお金は気にせず、合わなければやめた方がよい」

と考えてしまうかもしれません。

しかし、それも極端な考え方です。

資産形成では、長期間継続することが重要になる場合があります。

短期的に相場が下落したからといって、そのたびに投資方針を変更していれば、長期運用のメリットを活かせない可能性があります。

保険や住宅についても、短期的な損得だけで頻繁に変更することが適切とは限りません。

重要なのは、

「なぜ続けるのか」を説明できること。

「ここまでお金を払ったから」

ではなく、

「これからも続ける価値があるから」

と判断しているのであれば、継続することにも意味があります。

まとめ|過去にかけたコストと、未来の意思決定を分けて考える

投資、保険、住宅。

お金に関する大きな選択ほど、過去に使った金額も大きくなりやすいため、

「ここまで払ったから」

「ここまで続けたから」

「今やめたらもったいない」

という気持ちが生まれやすくなります。

そんなときは、一度、

「今この瞬間から考えても、続ける価値があるだろうか?」

と考えてみてください。

そして、

続けた場合。 やめた場合。 別の選択肢に変えた場合。

それぞれの「これから」を比較してみる。

過去から学ぶことは大切です。

しかし、

過去から学ぶことと、過去に縛られることは違います。

「もったいないから続ける」のではなく、 「今から考えても価値があるから続ける」。

サンクコスト効果を知っておくことは、投資や保険、住宅購入だけでなく、さまざまなお金の意思決定を考えるうえで役立つのではないでしょうか。

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