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AIに聞いても「客観的」とは限らない?確証バイアスとお金の意思決定

  • 執筆者の写真: 根本 寛朗
    根本 寛朗
  • 1 日前
  • 読了時間: 10分
AIに聞いても「客観的」とは限らない?確証バイアスとお金の意思決定

「自分なりに調べた結果、この投資が良いと思いました」

お金の相談をしていると、このようなお話を聞くことがあります。

もちろん、自分で調べて考えることはとても大切です。

今はインターネットで検索すれば、投資、保険、住宅ローン、税金など、さまざまな情報を簡単に得ることができます。

SNSを見れば、実際に投資している人の意見も見つかります。

さらに最近では、AIに質問すれば、自分が知りたいことを短時間で整理することもできます。

昔に比べれば、個人が意思決定するために得られる情報量は圧倒的に増えました。

それでも私は、

「たくさん調べたこと」と「偏りなく考えたこと」は違う

と思っています。

むしろ、自分が欲しい情報を簡単に集められるようになったからこそ、注意したいのが「確証バイアス」です。

そしてこれは、AIを使うときにも関係してきます。

「調べた結果」ではなく「欲しい答えを集めた結果」かもしれない

確証バイアスとは、自分がすでに持っている考えや仮説を支持する情報に注目しやすく、反対する情報を軽く見てしまう傾向のことです。

例えば、ある投資信託を買いたいと思ったとします。

最初は、

「本当にこの商品でいいのだろうか」

と調べ始めたはずです。

ところが、調べているうちに少しずつ気持ちが、

「この商品を買いたい」

に変わっていく。

すると、検索する言葉も変わってきます。

「〇〇投信 メリット」

「〇〇投信 今後」

「〇〇投信 おすすめ」


そして、良い情報が見つかる。

「やっぱり良さそうだ」

さらに調べる。

また肯定的な情報が見つかる。

最終的には、

「これだけ調べたんだから大丈夫」

と思う。

でも、ここで一度考えてみたいことがあります。

本当にその商品について調べていたのでしょうか。

それとも、

「その商品を買っても大丈夫だと思える材料」を集めていたのでしょうか。

似ていますが、この2つは違います。

情報を見る前に「問い」が偏っていることがある

私は、確証バイアスを考えるとき、

「どの情報を選んだのか」

だけではなく、

「そもそも、どんな問いから情報収集を始めたのか」

を見ることも重要だと思っています。

例えば住宅購入について、

「持ち家のメリット」

と検索するのか、

「持ち家を買って後悔する理由」

と検索するのか。

同じ住宅購入について調べていても、得られる情報は変わります。

投資でも、

「S&P500が長期投資に向いている理由」

と、

「S&P500に集中するリスク」

では、当然得られる情報が違います。

検索する言葉の時点で、自分が見たい方向をある程度決めているわけです。

これは検索エンジンが悪いという話ではありません。

私たち自身が、無意識のうちに「どの方向から情報を見るか」を決めているということです。

だから私は、

確証バイアスは、情報をどう読むかより前に、「何を聞こうとしたか」から始まることもある

と思っています。

専門家に相談すれば確証バイアスがなくなるわけでもない

これはインターネットだけの話ではありません。

専門家に相談するときにも起こります。

例えば、

「NISAを始めた方がいいですよね?」

という質問。

この質問にはすでに、

「私はNISAを始めた方がいいと思っている」

という考えが含まれています。

保険でも、

「この保険は解約した方がいいですよね?」

住宅でも、

「今は家を買わない方がいいですよね?」

と聞く。

そして、自分とは違う意見を言われると、別の専門家にも聞いてみる。

何人かに相談して、自分と同じ意見を言ってくれる人が見つかる。

すると、

「専門家もそう言っていた」

となります。

もちろん、セカンドオピニオンを取ること自体は悪いことではありません。

複数の専門家から意見を聞くことには意味があります。

ただ、

「違う視点を得るために複数の人に聞いている」のか、「自分の考えを肯定してくれる人を探している」のか。

ここは分けて考えた方がいいと思います。

専門家に相談したからといって、自動的に自分のバイアスがなくなるわけではありません。

AIなら「欲しい答え」を何度でも探せる

そして今、この問題をさらに考えさせられるのがAIです。

AIは非常に便利です。

分からないことを聞く。 情報を整理する。 複数の選択肢を比較する。

自分では思いつかなかった視点を出してもらう。

使い方によっては、意思決定の質を高めるための有効なツールになります。

一方で、私は、

AIは自分の確証バイアスを強化するためにも使えてしまう

ということは意識した方がいいと思っています。

例えば、

「私はS&P500に投資しようと思っています。長期投資として優れている理由を教えてください」

と質問する。

すると、その問いに沿ってさまざまな理由が整理されます。

それを読んで、

「やっぱりS&P500でいいんだ」

と思う。

でも、ここで注意したいのは、

AIが自分とは独立して「S&P500が最適だ」と判断したとは限らないということです。

そもそも、

「優れている理由を教えて」

と聞いています。

つまり、

自分が作った問いの方向に沿って、AIから情報を引き出している可能性がある。

ここを意識する必要があります。

「AIもそう言っている」は客観性の証明ではない

人に相談した場合、自分とは違う意見を言われることがあります。

AIの場合は、回答が気に入らなければ聞き直すことができます。

条件を追加する。

表現を変える。

別の角度から質問する。

何度でもできます。


もちろん、これはAIの大きなメリットです。

ただし使い方によっては、自分が納得できる回答が出るまで質問を変え続け、

最後に、

「AIも同じ意見だった」

となる可能性もあります。

でも、それは本当に第三者の意見なのでしょうか。

もしかすると、

自分が欲しかった結論を、AIにきれいに整理してもらっただけ

かもしれません。

AIの回答だから客観的なのではありません。

どんな前提を与えたのか。

何を質問したのか。

どんな情報を参照したのか。

反対方向からも検討したのか。

そこまで含めて考える必要があります。

人間側だけでなく、AI側の特性も考える

もう一つ注意したいのは、

「人間が偏った質問をすること」と「AIの回答そのものの特性」は、分けて考える必要があることです。

人間側には、確証バイアスがあります。

自分が信じたいことを支持する質問をしてしまう可能性がある。

一方、生成AIも、常に完全に正確で、同じ条件なら必ず同じように答えるものではありません。

誤った情報を生成する可能性もあれば、与えた情報や質問の仕方などによって回答が変わることもあります。

つまり、

人間の問いが偏る可能性と、AIの出力にも不確実性があることは別の問題です。

この2つを混同しないことも重要です。

「AIに聞いたから客観的」

でも、

「AIは信用できないから使わない」

でもない。

特性を理解したうえで、どう使うかを考えることが大切だと思っています。

AIには「答え」だけでなく「自分が見えていないもの」を聞く

では、AIをどのように使えばよいのでしょうか。

私は、自分の考えを整理するためだけではなく、

自分では見えていないものを探すためにも使う

ことが大切だと思っています。

例えば、ある投資を検討しているなら、

「この投資のメリットを教えて」

だけで終わらせない。

「この投資を選ばない理由は何がありますか?」

「どんな人には向いていませんか?」

「私が見落としていそうなリスクや前提はありますか?」

と聞いてみる。

そして、もう一つ考えてみたいのが、

「どんな条件になったら、自分はこの判断を変えるのか」

という問いです。

「考えを変える条件」を決めておく

投資でも経営でも、一度意思決定すると、その判断を正当化したくなることがあります。

だからこそ、判断する前に、

「どんな状態になったら考え直すのか」

を決めておく。

例えば投資なら、

なぜこの資産を持つのか。 何を期待しているのか。

ポートフォリオの中でどんな役割なのか。

運用期間はどのくらいなのか。

どの前提が変わったら見直すのか。

こうしたことを整理しておく。

住宅購入でも同じです。

予算。

通勤。

教育環境。

家族構成。

将来の住み替え。

何を重視しているのかを整理し、

「この条件を満たさなければ買わない」

というラインを持っておく。

意思決定した後では、自分の判断を守りたくなる。

なので、

決める前に「考えを変える条件」を考えておく。

これも、確証バイアスに左右されにくくする方法の一つだと思っています。

反対意見を聞くだけでも十分ではない

確証バイアスへの対策として、

「反対意見も聞きましょう」

と言われることがあります。

もちろん大切です。

ただ、私はそれだけでは十分ではないと思っています。

なぜなら、反対意見を聞いても、

「でも今回は違う」

「この人は事情を分かっていない」

と考えることができるからです。

自分の考えを守ろうと思えば、反対意見を否定する理由も探せます。

だから重要なのは、

賛成意見と反対意見を同じ数だけ集めることではなく、

「自分は今、どんな答えを欲しがっているのか」

を理解することだと思っています。

自分はその投資をしたいと思っている。

その保険をやめたいと思っている。

その家を買いたいと思っている。

まず、その現在地を認識する。

そのうえで情報を見る。

これだけでも、情報との向き合い方は変わります。

FPの役割は「欲しい答え」を返すことではない

FPとして相談を受けていると、お客様自身がすでに答えを持っていることもあります。

もちろん、その考えが目的や状況に合っていれば、そのまま進めることもあります。

でも、ときには違う角度から考えた方がいい場合もあります。

「なぜそう思ったのですか?」

「その目的なら、別の方法もあります」

「このリスクについてはどう考えていますか?」

と質問する。

相談されたことにそのまま答えるだけではなく、

その質問の前提まで一緒に考える。

私は、そこもFPの役割だと思っています。

お客様が欲しい答えと、専門家として伝えるべきことが必ずしも一致するとは限りません。 だからこそ、単に肯定するのではなく、必要であれば違う視点も提示する。 そのうえで、本人が理解し、納得して意思決定できる状態をつくる。 それが大切だと思っています。

情報が増えた時代だからこそ、「問い」を疑う

以前は、

「情報が足りない」

ことが問題になることが多かったと思います。

今は少し違います。

検索すれば情報が出てくる。

SNSにもさまざまな意見がある。

動画でも学べる。

専門家にも相談できる。

そしてAIには何度でも質問できる。

つまり、

自分が信じたいことを証明する材料も、簡単に集められる時代

になっています。

だからこそ、

「たくさん調べたから大丈夫」

ではなく、

「自分は何を調べたのか」

を考える。

そして、もう一段、

「なぜ、その問いを立てたのか」

まで考えてみる。

自分はどんな答えを期待しているのか。

反対方向からも考えたのか。

どんな条件なら自分の考えを変えるのか。

見落としている前提はないか。

AI時代に必要なのは、答えをたくさん持つことだけではないと思っています。

自分が立てた問いそのものを疑うこと。

確証バイアスを完全になくすことは難しくても、自分にもバイアスがあることを理解したうえで意思決定することはできます。

投資でも、保険でも、住宅でも。

情報があふれ、AIが身近になった時代だからこそ、より大切になっている考え方ではないでしょうか。

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