top of page
Finfinity_logo

年末調整で損していませんか?2026年、知らないと見落とす税金の新ルール

執筆者の写真: 根本 寛朗
根本 寛朗
4 時間前
読了時間: 11分

年末調整の書類が届くと、「去年と同じ内容だから」と、そのまま記入して提出している方も多いのではないでしょうか。

例年であれば、それでも大きな問題にならないこともあります。

ただ、2026年分は少し事情が違います。

基礎控除や給与所得控除が変わり、扶養親族の所得要件も引き上げられました。大学生年代の子どもがアルバイトをしている家庭では、特定親族特別控除の判定に使う給与収入の目安も変わります。

さらに、23歳未満の扶養親族がいる家庭では、生命保険料控除にも特例があります。※1

制度改正というと、

「税金が安くなるのか」

に目が向きやすいのですが、今回の改正で私がむしろ気になるのは、似たような“年収の壁”がいくつも出てくることです。

178万円。

136万円。

159万円。

197万円。

数字だけを覚えてしまうと、かえって分からなくなります。

大切なのは、その数字が何の判定に使われるのか。

今回は、2026年分の年末調整で特に確認しておきたいポイントを整理します。

2026年分の年末調整、ここが変わる

2026年分の年末調整、ここが変わる

基礎控除は最大104万円に

まず基礎控除です。

2026年分では、合計所得金額489万円以下の場合、基礎控除は104万円になります。

489万円を超えて655万円以下なら67万円、655万円を超えて2,350万円以下なら62万円です。

さらに所得が高くなると、2,350万円超2,400万円以下は48万円、2,400万円超2,450万円以下は32万円、2,450万円超2,500万円以下は16万円となり、2,500万円を超えると基礎控除はありません。※2

ここで「基礎控除が104万円になった」とだけ覚えると少し危険です。

全員が104万円になるわけではありません。 104万円は最大額で、本人の合計所得金額によって変わります。

制度改正を見るときは、大きく書かれている数字だけではなく、「自分がどの区分に入るのか」まで見る必要があります。

給与所得控除は2026年分では最低74万円

給与所得者には、給与収入そのものに税金がかかるのではなく、給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算する仕組みがあります。

2026年度税制改正では、この給与所得控除の最低保障額について、本則が65万円から69万円へ引き上げられました。

さらに、2026年分と2027年分については5万円を上乗せする特例があります。

そのため、この2年間は、給与所得控除の最低保障額は74万円となります。※3

ここは「69万円に変わった」と説明してしまうと、2026年分の年末調整としては不十分です。

2026年・2027年については、

69万円+5万円=74万円。

この74万円が、後ほど出てくる扶養親族や特定親族の給与収入ベースの判定にも関わってきます。

178万円を超えると、所得税がかかり始める目安に

今回よく目にする数字の一つが、178万円です。

基礎控除最大104万円と、給与所得控除最低74万円を合計すると178万円になります。

給与収入だけで、ほかに所得がなく、基礎控除104万円の対象となる場合には、

給与収入178万円以下であれば所得税はかからず、178万円を超えると所得税負担が生じ始める

というのが基本的な考え方です。※3

財務省も、2026年度税制改正により所得税の負担開始水準を178万円以上に引き上げたと説明しています。

ただし、ここからが少しややこしいところです。

「178万円まで所得税がかからないのであれば、子どもも178万円まで扶養に入れるのでは?」

という話にはなりません。

本人に所得税がかかる基準と、家族を税法上の扶養親族として扱える基準は別だからです。

178万円と136万円は、同じ「壁」ではない


178万円と136万円は、同じ「壁」ではない

扶養親族の給与収入は136万円以下が基本的な目安

2026年分から、扶養親族などの所得要件も引き上げられます。

扶養親族や同一生計配偶者などの合計所得金額要件は、

58万円以下から、62万円以下へ変更されました。※4

そして2026年分・2027年分について、給与収入だけの場合は給与所得控除74万円を使います。

62万円+74万円なので、給与収入136万円以下が、税法上の扶養親族に該当する基本的な目安になります。※4

つまり、178万円は本人の所得税。136万円は税法上の扶養。

同じ「年収の壁」という言葉で語られていても、見ている制度が違います。

さらに言えば、

税法上の扶養と、健康保険などの社会保険上の扶養も別です。

ここを全部一つの数字で判断しない方がいいと思います。

なお、この136万円という給与収入ベースの数字は、給与所得控除に5万円の時限的な上乗せがある2026年分・2027年分の目安です。

大学生年代の子どもは「136万円を超えたら終わり」ではない

大学生年代の子どもがアルバイトをしている家庭は、さらに確認しておきたい制度があります。

特定親族特別控除です。

19歳以上23歳未満の親族について、2026年分・2027年分では、合計所得金額が62万円を超えて123万円以下であれば、一定の特定親族特別控除を受けられます。

給与収入だけで考えると、136万円超197万円以下が対象範囲の目安です。※4

そして、合計所得金額が62万円超85万円以下の場合、控除額は最大63万円。

給与収入だけなら、136万円超159万円以下がこの範囲になります。

その後、所得が増えるにつれて控除額は段階的に減っていき、給与収入が197万円を超える水準になると特定親族特別控除の対象外になります。※4

159万円、197万円も、74万円の給与所得控除を前提とした2026年分・2027年分の目安です。

大学生年代の子どもは「特定親族特別控除」を確認

大学生年代の子どもは「特定親族特別控除」を確認

例えば、年収500万円・大学生の子どもがいる家庭なら

少し具体的に考えてみます。

例えば、会社員の親の年収が500万円で、20歳の大学生の子どもがアルバイトをしている家庭を考えます。

子どもの給与収入が150万円だった場合。

2026年分では給与所得控除74万円を差し引くため、

150万円-74万円=76万円。

合計所得金額は76万円です。

62万円を超え85万円以下なので、

親は特定親族特別控除63万円の対象になります。

「136万円を超えているから、親の控除はゼロ」ではありません。

一方、子どもの給与収入が170万円だった場合は、

170万円-74万円=96万円。


合計所得金額96万円なので、特定親族特別控除は41万円になります。※4

子どもの収入が増えるにつれて、親の所得控除は段階的に小さくなります。

こうして数字にすると、 「136万円を1円でも超えたら急に大損する」

という制度ではないことが分かります。

もちろん、ここでは所得税上の控除だけを見ています。

社会保険の扱いや子ども本人の税負担は別に確認する必要があります。

私は、税金の壁だけを理由に働く時間を決めるより、世帯全体で手取りがどう変わるのかを見る方がいいと思っています。

23歳未満の扶養親族がいる家庭は生命保険料控除も確認

2026年分では、生命保険料控除にも特例があります。

23歳未満の扶養親族がいる場合、新契約に係る一般生命保険料控除について、

通常の最高4万円から、最高6万円へ引き上げられます。※5

この特例は当初2026年分の措置として設けられましたが、2026年度税制改正で適用期限が1年延長され、2027年分まで適用される予定です。※6

ただし、ここも少し注意が必要です。

6万円になるのは、所得税における一般生命保険料控除の特例です。

介護医療保険料控除や個人年金保険料控除の上限が6万円になるわけではありません。

また、生命保険料控除全体の所得税上の限度額は、12万円のままです。※5

そして今回の6万円への引上げは所得税の制度です。

個人住民税の生命保険料控除の限度額が6万円へ引き上げられる制度ではありません。

ここも所得税と住民税を同じように考えない方がいいところです。

23歳未満の扶養親族がいるなら、生命保険料控除も確認


23歳未満の扶養親族がいるなら、生命保険料控除も確認

控除が2万円増えても、税金が2万円減るわけではない

一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に増えると、

「2万円税金が安くなる」

と思う方もいるかもしれません。

でも、そうではありません。

2万円増えるのは、税額控除ではなく所得控除です。

例えば、追加で2万円の所得控除を受け、その部分に対する所得税率が10%なら、単純計算では所得税への影響は約2,000円です。

実際の税額は所得状況などによって変わります。

また、先ほど書いたとおり、この新しい6万円の特例は所得税の制度なので、

「住民税も同じだけ控除が増える」

というわけでもありません。

制度を使うことと、その制度によって税金がいくら減るのかは、分けて考える必要があります。

2026年分は12月の年末調整でまとめて精算する

今回の改正には、適用のタイミングにも特徴があります。

国税庁によると、2026年11月までの給与等の源泉徴収事務については、原則として改正前と同じ取扱いをします。

そして、12月の年末調整で改正後の基礎控除額や給与所得控除額などを反映して精算します。※4

そのため、人によっては年末調整で戻ってくる税額が例年より大きくなる可能性があります。

ただ、

「還付が多かったから得をした」

というわけではありません。

年末調整は、1年間に給与から源泉徴収されていた所得税と、本来負担する年間の所得税額を合わせる作業です。

多く徴収されていれば戻る。

足りなければ追加で徴収される。

年末調整は、基本的にはその精算です。

年末調整で実際に確認する書類

ここも整理しておいた方が分かりやすいと思います。

扶養親族について申告する基本的な書類は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。※7

そして2026年分では、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書」という兼用様式があります。※7

つまり、

基礎控除申告書。

配偶者控除等申告書。

特定親族特別控除申告書。

所得金額調整控除申告書。

が、すべて別々の4枚の書類として配られるわけではありません。

一つの兼用様式になっています。

そのほか、生命保険料控除などを受ける場合には、給与所得者の保険料控除申告書を提出します。

会社が計算してくれるのは税額です。

しかし、

誰を扶養しているのか。

家族はいくら収入があるのか。

どの保険料を払っているのか。

こうした情報は、本人が申告しなければ会社には分かりません。

私は、年末調整は、会社が勝手にやってくれる手続きではなく、自分の状況を会社へ正しく伝えて税額を精算してもらう手続きと考えた方が分かりやすいと思っています。

申告を忘れたら、もう取り戻せないのか

ここも必要以上に不安になる必要はありません。

年末調整で控除の申告を忘れたとしても、制度によっては後から確定申告を行うことで精算できる場合があります。

ですから、 「年末調整で書き忘れたら絶対に損をする」 という話ではありません。

ただ、普段確定申告をしていない会社員にとっては、年末調整の段階で正しく申告しておく方が手間は少なくなります。

年末調整は、

本来使える控除を漏れなく反映する最初の機会

と考えるといいと思います。

数字を覚えるより、「何の数字か」を確認する

2026年分は、

104万円。

74万円。

136万円。

159万円。

178万円。

197万円。

いろいろな数字が出てきます。

私は、全部を暗記する必要はないと思っています。

178万円は、本人の所得税がかからない給与収入の目安。

136万円は、税法上の扶養親族に該当する給与収入の基本ライン。

159万円は、大学生年代の特定親族特別控除63万円が維持される給与収入の上限目安。

197万円は、特定親族特別控除の対象となる給与収入の上限目安。

それぞれ意味が違います。

そして136万円・159万円・197万円は、給与所得控除74万円を前提とした2026年分・2027年分の数字です。

税制改正の記事を見るときは、「○○万円の壁」という言葉だけではなく、

その壁が、誰の何を判定しているのか。

そこを見ることが大切です。

年末調整は節税テクニックではない

年末調整について調べると、

「年末調整で得する方法」

「知らないと損する控除」

といった言葉が並びます。

もちろん、使える控除を使わずに税金を多く払う必要はありません。

一方で、

控除を増やすために必要のない保険へ入る。

扶養控除を維持するためだけに働く時間を減らす。

という順番になるのも違うと思っています。

税金は、家計を考えるうえで重要な条件です。

でも、

税金を最小化すること自体が家計の目的ではありません。

まず働き方や家族の生活を考える。

そのうえで、

今年の制度では税金がどうなるのか。

使える控除に漏れはないか。

を確認する。

2026年分の年末調整は、前年までと同じ感覚で書類を出すと見落としが起こりやすい年です。

今年は年末調整の書類が届いたら、去年の申告内容をそのまま写すのではなく、

家族の年齢、収入見込み、保険料、そして自分の所得状況を一度確認する。

それだけでも、制度改正を正しく家計に反映しやすくなると思います。



【出典・参考資料】

※1 国税庁「令和8年分年末調整のしかた」2026年分の主な変更点として、基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件、23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例を参照。

※2 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」および財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」2026年分の基礎控除額と所得区分を参照。

※3 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」給与所得控除の最低保障額69万円への引上げ、2026年・2027年の5万円上乗せ特例、所得税負担開始水準178万円を参照。

※4 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」扶養親族の合計所得62万円以下、給与収入136万円以下、特定親族136万円超197万円以下、特定親族特別控除の段階的な控除額、2026年11月までの源泉徴収事務と12月の年末調整での精算を参照。

※5 国税庁「令和8年分 源泉徴収のあらまし」・財務省「令和7年度税制改正」23歳未満の扶養親族を有する場合の一般生命保険料控除最高6万円、生命保険料控除全体の所得税上の限度額12万円を参照。

※6 財務省「令和8年度税制改正の大綱」23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除特例について、適用期限を1年延長する改正を参照。

※7 国税庁「各種申告書(扶養控除等申告書など)」「令和8年分扶養控除等(異動)申告書」および、基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除の兼用申告書の様式を参照。

コメント


bottom of page