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50代から住宅ローンを繰上返済するのは正解?老後資金との優先順位

執筆者の写真: 根本 寛朗
根本 寛朗
12 分前
読了時間: 19分

50代になると、住宅ローンの残債が気になり始める方も多いと思います。

「定年までに住宅ローンは完済しておいた方がいい」

「退職金で残りの住宅ローンを返してしまおう」

こうした話もよく聞きます。

確かに、定年後に住宅ローンの返済が残っていなければ、毎月の支出は軽くなります。金利負担も減らせますし、精神的な安心感もあるでしょう。

ただ、私は50代だからといって、繰上返済を優先することが必ずしも正解だとは考えていません。

例えば、住宅ローンの残債が1,000万円で、金融資産が3,000万円ある方。

同じ住宅ローン残債1,000万円でも、金融資産が500万円しかない方。

この2人が、同じように繰上返済を考えてよいでしょうか。

さらに、借入金利が年0.8%なのか、年3%なのかによっても判断は変わります。

資産運用を続けている方であれば、繰上返済に充てる資金を運用していたらどうなるのか、という視点も必要です。

住宅ローンは、できるだけ早く返せばよいというものでもありません。

住宅ローンの利息を減らすことと、老後資金を確保することは、必ずしも同じ方向を向いていないからです。

今回は、50代からの住宅ローン繰上返済について、返済方式の違いから、資産運用との比較、金融資産と住宅ローン残債の関係まで整理してみたいと思います。

住宅ローンの返済方式には2種類ある

まず、繰上返済を考える前に、住宅ローンの返済方法を確認しておきたいと思います。

主な返済方法には、「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。

元利均等返済とは

元利均等返済は、毎月返済する元金と利息の合計額が、原則として一定になる返済方法です。

毎月の返済額が変わらないため、家計の管理がしやすいというメリットがあります。

ただし、返済開始当初は借入残高が大きいため、返済額に占める利息の割合が比較的大きく、元金の減少が緩やかです。

返済が進むにつれて利息部分が減り、元金返済の割合が増えていきます。

※変動金利の場合は、金利変更等により毎月の返済額が見直されることがあります。

元金均等返済とは

一方、元金均等返済は、毎月返済する元金の金額を一定にする方法です。

そこに借入残高に応じた利息が加わるため、返済開始当初の支払額は大きくなります。

ただし、返済が進むにつれて利息が減るので、毎月の返済額も徐々に少なくなります。

借入金額・金利・返済期間が同じであれば、元金均等返済の方が元金の減少が早く、総支払利息も少なくなります。※1

では、実際にはどちらが多く利用されているのでしょうか。

住宅ローン利用者の多くは元利均等返済

住宅金融支援機構が公表している2025年度の【フラット35】利用者調査では、元利均等返済を利用している方は約96.4%、元金均等返済は約3.6%でした。※2

つまり、この調査では、約96%の方が元利均等返済を利用していることになります。

ただし、これは【フラット35】利用者に限った集計であり、住宅ローン全体の利用割合ではありません。

元利均等返済が選ばれやすい理由の一つは、借入当初の毎月返済額を比較的抑えられることです。

住宅購入直後は、住宅関連の支出に加えて、子どもの教育費なども重なりやすい時期です。

返済当初の負担を抑え、毎月の家計を管理しやすい元利均等返済には、一定の合理性があります。

同じ3,000万円を借りても、返済額は違う

借入金額3,000万円、金利年1.5%、返済期間35年、全期間固定金利という条件で比較してみます。

比較項目

元利均等返済

元金均等返済

借入金額

3,000万円

3,000万円

返済期間

35年

35年

毎月返済額

約9.2万円

初回約10.9万円

総支払利息

約858万円

約789万円

返済額の変化

原則一定

徐々に減少

※独自試算。金利は年1.5%で固定、ボーナス返済・手数料等は考慮しない。

このケースでは、元金均等返済の方が利息総額は約69万円少なくなります。

ただし、借入当初の毎月返済額は元金均等返済の方が大きくなります。

単純に「総支払利息が少ない方がよい」という話ではなく、現在の家計と将来の収支を踏まえて選ぶことが大切です。

元利均等返済と元金均等返済の違い

返済後半になると、利息の割合は小さくなる


ここが、50代からの繰上返済を考えるうえで重要なポイントです。


元利均等返済では、毎月の返済額が原則一定でも、元金と利息の割合は一定ではありません。


同じ借入金額3,000万円、金利年1.5%、35年返済で考えてみます。


毎月返済額は約9万1,855円です。

そのうち、返済開始当初の利息は約3万7,500円。

返済額に占める利息の割合は約40.8%です。

ところが、返済20年目には利息の割合が約21.3%まで下がり、30年目には約8.6%になります。

返済時期

毎月返済額に占める利息割合

1年目

約40.8%

10年目

約32.3%

20年目

約21.3%

30年目

約8.6%

35年目

約1.5%

※各年の最初の返済月における概算。金利が年1.5%で変わらない前提。


例えば35歳で住宅ローンを借りた方なら、55歳時点では返済開始から20年が経過しています。

この場合、毎月の返済額の多くは、すでに元金返済に充てられていることになります。

もちろん、繰上返済をすれば将来の利息は減らせます。

ただし、返済開始直後と20年経過後では、残りの返済期間も、これから支払う利息の総額も違います。


繰上返済は早いほど利息軽減効果が大きくなりやすく、返済後半になるほど、その効果は小さくなります。


例えば、上記の35年ローンで300万円を期間短縮型の繰上返済に充てた場合、借入当初なら将来利息の軽減額は約191万円ですが、20年経過後なら約67万円です。


これはそれぞれの時点以降の利息軽減額であり、異なる時点の金銭価値を直接比較したものではありません。


それでも、返済開始当初と後半では効果に違いがあることが分かります。


50代から繰上返済するなら、単に「利息が減るから得」と考えるのではなく、


残りの期間で、実際にいくら利息を減らせるのか。


ここを確認しておきたいところです。


返済が進むほど、利息の割合は小さくなる


繰上返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」がある


繰上返済には、大きく2つの方法があります。

一つは、返済期間を短くする「期間短縮型」。

もう一つは、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」です。



・期間短縮型

期間短縮型は、毎月の返済額を基本的に変えず、残りの返済期間を短縮する方法です。

例えば、70歳まで返済する予定だった住宅ローンを、67歳までに完済できるようにするといった使い方です。

同じ繰上返済額であれば、一般的には返済額軽減型よりも利息軽減効果が大きくなります。※3


・返済額軽減型

返済額軽減型は、残りの返済期間を変えず、毎月の返済額を減らす方法です。

利息軽減効果は期間短縮型より小さくなる傾向がありますが、月々の家計負担を減らせるというメリットがあります。

50代後半から60代にかけて、収入が減少することを想定している方なら、こちらの方が合っている場合もあります。

55歳で300万円を繰上返済したら?


例えば、55歳で以下の条件だったとします。


  • 住宅ローン残高:1,500万円

  • 残り返済期間:15年

  • 借入金利:年2.0%固定

  • 繰上返済額:300万円


この場合、繰上返済をしなければ、毎月の返済額は約9万6,526円です。


300万円を期間短縮型で返済すると、完済までの期間は約11年8か月になり、支払利息は約92万円減ります。


一方、返済額軽減型なら、残り15年間という期間は変わらず、毎月返済額が約7万7,221円になります。


この場合の支払利息の軽減額は約47万円です。


項目

期間短縮型

返済額軽減型

繰上返済額

300万円

300万円

返済期間

約11年8か月

15年

毎月返済額

約9.65万円

約7.72万円

利息軽減額

約92万円

約47万円

※独自試算。繰上返済時点の残高・期間を起点に計算。住宅ローン控除、手数料、金利変更等は考慮しない。


利息をできるだけ減らすなら期間短縮型が有利です。


ただし、60歳以降の収入減少が心配であれば、毎月の支出を抑えられる返済額軽減型にも意味があります。


何を減らしたいのか。総支払利息なのか、毎月の返済負担なのか。

ここによって、選ぶべき方法は変わります。

300万円の繰上返済、2つの型で効果が違う


住宅ローン金利が何%なら、繰上返済を優先すべきか

次に、金利との関係です。

当然ですが、借入金利が高いほど、繰上返済によって減らせる利息は大きくなります。

先ほどと同じく、住宅ローン残高1,500万円、残り15年で、300万円を期間短縮型で繰上返済するケースを考えます。

金利だけを変えて比較すると、次のようになります。

借入金利

利息軽減額

年1.0%

約43万円

年1.5%

約67万円

年2.0%

約92万円

年3.0%

約146万円

※固定金利を前提とする独自試算。住宅ローン控除・手数料等を除く。

金利が年1%の場合と年3%の場合では、同じ300万円を繰上返済しても、利息軽減額に100万円以上の違いが出ます。

ただし、ここで注意したいのは、金利が低ければ繰上返済をしない方がよい、金利が高ければ必ず繰上返済した方がよい、というわけではないことです。

その300万円が、老後資金として必要なのか。 今後、資産運用する予定なのか。

退職後の収支はどうなのか。

こうした条件も一緒に考える必要があります。

金利によって繰上返済の効果はどう変わる?


住宅ローン金利と資産運用、どちらを優先するべきか


ここからは、資産運用との比較です。


例えば、住宅ローン金利が年1%で、保有している投資信託の期待リターンが年4%だったとします。


単純に数字だけを比較すれば、


「年1%の借入金利より、年4%で運用した方が有利ではないか」


と考えられます。


この考え方には合理的な部分があります。


ただし、重要な違いがあります。


住宅ローンの繰上返済は、将来支払う予定だった利息を減らす行為です。


固定金利であれば、契約条件に基づく利息軽減額を相当程度具体的に計算できます。


一方、資産運用の年4%は、あくまで期待リターンです。


毎年4%で運用できるという意味ではありません。


年10%上昇する年もあれば、20%下落する年もあるかもしれません。


また、NISA口座であれば一定の運用益は非課税ですが、課税口座では売却益などに原則約20%の税金がかかります。※4


ですから、実際に比較する際は、


住宅ローンの実質的な負担と、資産運用の税引後期待リターン・リスクを比較する


必要があります。


特に50代からの資産運用では、運用期間も重要です。


65歳で退職する予定なら、55歳からの10年間で大きな下落が起きたとき、その資産を取り崩さずに待てるのか。


老後の生活費に使う予定の資金なのか。


それとも、70代以降まで運用を続けられる資金なのか。


私は、ここも分けて考えた方がいいと思っています。


住宅ローンの金利と運用利回りだけでは、どちらが合理的かは決められません。



住宅ローン控除が残っているかも確認したい

住宅ローンの繰上返済では、住宅ローン控除も考慮する必要があります。

住宅ローン控除は、一定の要件を満たす場合に、住宅ローンの年末残高などを基に所得税から控除を受けられる制度です。

2026年入居の住宅では、対象となる住宅の区分などに応じて、控除率0.7%を基にした制度が設けられています。※5

ただし、50代の方が現在返済している住宅ローンについては、住宅を取得した年や入居した年によって適用される制度が異なります。

過去には控除率1%の制度もありました。

そのため、現在住宅ローン控除を受けている方は、自分に適用されている控除率、控除期間、借入限度額を確認する必要があります。

例えば、繰上返済によって年末残高が減れば、その分、住宅ローン控除額も減る可能性があります。

もっとも、控除額は実際に負担している所得税額や制度上の限度額などによって変わります。

単純に、

「借入金利1%-住宅ローン控除0.7%=実質負担0.3%」

と計算して終わりにするのは正確ではありません。

さらに、繰上返済によって、借入当初から繰上返済後の最終返済日までの償還期間が10年未満になる場合には、住宅ローン控除の適用要件を満たさなくなることがあります。※6

繰上返済によって減る利息だけではなく、住宅ローン控除がどの程度変わるのか。

ここは必ず確認しておきたいところです。

金融資産が住宅ローン残債より多い場合

ここからは、金融資産と住宅ローン残債の関係を考えてみます。

例えば、

金融資産3,000万円。

住宅ローン残債1,500万円。

という方がいたとします。

この方が300万円を繰上返済すると、金融資産は2,700万円、住宅ローン残債は1,200万円になります。

金融資産は減りますが、同時に負債も減っています。

ここで考えたいのが、家計全体のバランスシートです。

仮に税金や手数料などがなければ、

300万円繰上返済したからといって、その瞬間に純資産が300万円増えるわけではありません。

金融資産が300万円減り、負債も300万円減るからです。

繰上返済の効果は、その後の利息負担が減ることにあります。

一方、自由に使える金融資産が減るという変化も起きます。

金融資産が住宅ローン残債を十分に上回っている方なら、繰上返済をしても老後資金に大きな影響がない場合があります。

その場合は、借入金利、運用方針、団体信用生命保険、住宅ローン控除などを比較して判断すればよいでしょう。

ただし、金融資産が3,000万円あるといっても、ほとんどが株式や投資信託の場合は注意が必要です。

市場が下落したタイミングで生活費が必要になれば、資産を売却せざるを得ないかもしれません。

金融資産が住宅ローン残債を上回っていることと、いつでも繰上返済できることは同じではありません。

金融資産の金額だけでなく、中身まで確認する必要があります。

金融資産が住宅ローン残債より少ない場合

一方で、

金融資産800万円。

住宅ローン残債1,500万円。

というケースを考えます。

この方が300万円を繰上返済すると、金融資産は500万円になります。

住宅ローン残債は1,200万円へ減りますが、手元に残る金融資産も大きく減ってしまいます。

そして、50代は今後さまざまな支出が考えられる時期です。

子どもの大学進学。

住宅の修繕。

親の介護。

自分たちの医療費。

さらに、60歳以降に収入が減ることもあります。

こうした状況で手元資金を減らしすぎると、住宅ローンの利息は減ったものの、別の支出に対応しにくくなる可能性があります。

もちろん、金融資産が住宅ローン残債より少ないからといって、繰上返済をしてはいけないわけではありません。

高金利で、毎月の返済負担が家計を圧迫しているなら、返済額軽減型を検討する意味もあります。

ただし、金融資産が少ない状況では、繰上返済よりも先に生活防衛資金や老後資金を確保しておく必要性が高くなります。

住宅ローン残債を減らすことが、家計の安全性を高めるとは限らないのです。

金融資産と住宅ローン残高の関係で優先順位は変わる


団体信用生命保険も忘れてはいけない

住宅ローンを考えるうえで、もう一つ確認したいのが団体信用生命保険、いわゆる「団信」です。

一般的な団信では、住宅ローンの契約者が死亡した場合などに、保険金によって住宅ローン残債が返済されます。

保障内容は契約によって異なり、がんや3大疾病などに対する保障が付いている商品もあります。※7

例えば、住宅ローン残債が1,500万円あり、団信によって死亡時に残債が完済される契約だったとします。

繰上返済をせずに金融資産を保有していれば、万一の場合にはローン残債が団信で完済され、保有金融資産を家族に残せる可能性があります。

一方、繰上返済をしていれば、その分の金融資産はすでに返済に充てています。

もちろん、住宅ローン残債そのものも減っています。

ですから、団信があるから絶対に繰上返済しない方がいい、という話ではありません。

ただ、住宅ローンには借金である側面だけでなく、保障が付いているという側面もあります。

特に50代では、家族の保障や老後資金を含めて考えておきたいところです。

退職後のキャッシュフローを見てから判断する

私は、50代から住宅ローンの繰上返済を考えるときには、退職後のキャッシュフローを確認することが重要だと思っています。

例えば、65歳以降の夫婦の公的年金などの手取り収入が月22万円。 住宅ローン返済を除いた生活費が月30万円。

住宅ローン返済が月9.6万円。 だったとします。

この場合、毎月の不足額は、

30万円+9.6万円-22万円=

17.6万円です。

年間では約211万円になります。

仮に住宅ローンを完済していれば、毎月の不足額は8万円です。

年間では96万円。

その差は年間約115万円です。

住宅ローンがあるかないかで、退職後の必要な取り崩し額は大きく変わります。

ただし、住宅ローンを完済するために金融資産を大きく減らしていれば、今度は取り崩すための資産が少なくなっています。

ここが難しいところです。

毎月の不足額が少ないことと、老後資金が十分であることも、同じではありません。

だからこそ、繰上返済前と繰上返済後の両方について、将来の金融資産残高まで比較する必要があります。

だからこそ、ライフプランを作ってから判断したい

ここまで、金利や住宅ローン残高、金融資産との関係を見てきました。

ただ、実際の家計では、これらの条件が独立しているわけではありません。

住宅ローンの返済は、教育費や老後の生活費、資産運用、働き方などと同時に進んでいきます。

そのため、私は50代から繰上返済を検討するなら、一度ライフプランを作成してみることをおすすめしています。

例えば、55歳時点で金融資産が2,000万円あり、住宅ローン残債が1,500万円ある家庭を考えてみます。

一見すると、300万円程度の繰上返済であれば問題なさそうに感じるかもしれません。

しかし、60歳で役職定年によって収入が減り、65歳で完全に退職する予定だったらどうでしょうか。

その間に子どもの教育費が必要だったり、住宅の修繕が重なったりすることも考えられます。

現在の金融資産だけを見れば余裕があっても、将来の収支まで確認すると、70代で資金不足になる可能性が見えてくるかもしれません。

逆に、退職後の年金収入と生活費のバランスがよく、資産運用を含めた金融資産も十分に確保できるのであれば、繰上返済をしても問題がないケースもあります。

そこで比較したいのが、例えば次の3つのパターンです。

  • 住宅ローンは繰上返済せず、金融資産を維持する

  • 300万円を繰上返済し、返済期間を短縮する

  • 300万円を繰上返済し、毎月の返済額を減らす

この3つについて、65歳、75歳、85歳、そして90歳以降までの収支と金融資産残高を比較します。

さらに、資産運用をしている場合には、想定どおりに運用できたケースだけでなく、運用成績が悪化したケースも確認します。

すると、繰上返済をした方が利息は少ないものの、途中で使える金融資産が不足するケースもあれば、繰上返済によって退職後の支出が抑えられ、家計が安定するケースも見えてきます。

住宅ローンだけを計算するのではなく、将来の家計全体をシミュレーションする。

これが、ライフプランを作成する意味だと思っています。

もちろん、ライフプランは将来を正確に予測するものではありません。

収入も支出も、資産運用の結果も、想定どおりに進むとは限りません。

だからこそ、条件を変えて複数のシナリオを比較し、将来の変化に対応できる余力があるかを確認する必要があります。

繰上返済をすることが正解なのかを考える前に、そもそも自分たちは将来いくら必要で、いくら残せるのか。

そこを把握して初めて、繰上返済の優先順位を考えられるのではないでしょうか。

50代からの繰上返済は「いつ完済するか」だけで決めない

住宅ローンが70歳まで残っていると聞くと、不安になる方もいると思います。

確かに、年金生活に入ってからもローン返済が続くことは、家計に負担となる可能性があります。

ただし、金融資産が十分にあり、毎月の返済額も無理のない範囲であれば、必ずしも問題とは限りません。

一方、65歳で住宅ローンを完済できたとしても、そのために老後資金がほとんど残らなくなったのであれば、それが正しい選択だったのかは考える必要があります。

私は、住宅ローンの完済年齢だけでなく、

完済したときに、金融資産がいくら残っているのか。

退職後の収支はどうなるのか。

予期しない支出に対応できるのか。

を確認する方が大切だと考えています。

50代から繰上返済を考える際の優先順位

最初に確認するのは、生活防衛資金や近い将来の支出に備える資金が十分にあるかどうかです。

その次に、住宅ローンの金利、残債、返済期間、住宅ローン控除の有無を確認します。

さらに、退職後の収入と生活費、年金受給までの期間、将来の医療・介護費用などを考えます。

そのうえで、繰上返済と資産運用を比較します。

金利が低く、十分な運用期間とリスク許容度があり、老後資金も確保できているなら、繰上返済を急がず運用を続けることにも合理性があります。

一方、金利負担が大きく、退職後の返済が生活を圧迫する可能性があるなら、繰上返済を優先する選択も考えられます。

50代の繰上返済は、何を優先する?


繰上返済をすること自体が目的ではない

住宅ローンは借金です。

借金がなくなることで安心する気持ちは、私も理解できます。

ただし、老後資金を考えるときには、借金がないことだけが正解ではありません。

住宅ローンの利息を減らす。

資産運用を続ける。

十分な現金を持っておく。

退職後の毎月の支出を減らす。

それぞれに意味があります。

大切なのは、その人の金融資産、住宅ローン残債、金利、働き方、年金、家族構成、将来の生活によって、何を優先するのが合理的なのかが変わることです。

50代だから繰上返済をした方がいい。

金利が低いから資産運用をした方がいい。

金融資産があるから完済した方がいい。

私は、いずれも一つの条件だけで判断してしまうのは違うと思っています。

住宅ローンを返済することは、老後の安心につながる選択肢の一つです。

しかし、そのために老後の選択肢を狭めてしまっては本末転倒です。

50代から考えるべきなのは、「住宅ローンをいつ返し終えるか」だけではなく、「老後にどのくらいの資産と選択肢を残せるか」。

そこまで比較して、初めて自分に合った繰上返済の判断ができるのではないでしょうか。


【出典・参考資料】

※1 一般社団法人 全国銀行協会「住宅ローンの仕組みと返済方法」元利均等返済と元金均等返済の違い、毎月返済額、総支払利息、メリット・デメリット等を参照。https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-d/5215/

※2 住宅金融支援機構「2025年度【フラット35】利用者調査・集計表」返済方式別利用件数を参照。【フラット35】全体35,553件のうち、元利均等返済34,256件、元金均等返済1,297件。本文の構成比は件数から算出。https://www.jhf.go.jp/about/research/loan/flat35/2025.html

※3 一般社団法人 全国銀行協会「繰上返済は有利?手数料は?住宅ローンの繰上返済」期間短縮型と返済額軽減型の違い、利息軽減効果、最低返済額・手数料等を参照。https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-d/5218/

※4 金融庁「NISAを知る」NISA口座における運用益の非課税制度、一般の課税口座との違い等を参照。https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/

※5 国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」住宅ローン控除の控除率、対象住宅、控除期間および入居年による違い等を参照。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-1.htm

※6 住宅金融支援機構「繰上返済(個人住宅融資の場合)」繰上返済後の償還期間が10年未満になる場合の住宅ローン控除への影響等を参照。https://www.jhf.go.jp/hensai/kuriage/index.html

※7 住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険制度」死亡時等の住宅ローン債務弁済、3大疾病などの保障内容を参照。https://www.jhf.go.jp/danshin_menu/shin-danshin/index.html

その他参考資料

国土交通省「住宅ローンの金利リスクの普及啓発について」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mortgage-rate-risk.html

一般財団法人 住宅金融普及協会「繰上げ返済の可否を判断する際のポイントとは?」https://www.sumai-info.com/loan-knowledge/loan_q_a02.html

※本文の返済シミュレーションは、記載した前提条件に基づく独自計算です。実際の返済額・利息軽減額は金融機関の計算方法、返済日、金利変更、手数料等によって異なります。

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