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株式投資は本当に「複利」で増えるのか?配当と企業成長から考える資産形成の本質

執筆者の写真: 根本 寛朗
根本 寛朗
3 時間前
読了時間: 9分

株式投資は本当に「複利」で増えるのか?配当と企業成長から考える資産形成の本質

「長期投資では複利の効果が大きくなる」

資産形成を考えるとき、よく耳にする言葉です。たとえば100万円を年率5%で30年間運用すると、複利計算では約432万円になります。一方、同じ年率5%でも単利計算では250万円です。

この差は確かに大きく見えます。ただ、ここで一度立ち止まって考えたいことがあります。

株式や投資信託は、預金と同じ意味で「複利」で増えているのでしょうか。

私は、複利という考え方そのものは資産形成において非常に重要だと思っています。 一方で、「複利で計算できること」と「何によって利益が生まれるか」は別の話です。

この違いを理解することが、金融商品を正しく選ぶための土台になるのではないでしょうか。

「単利」と「複利」は、もともと利息の計算方法

まず確認しておきたいのは、単利と複利は本来、利息の計算方法だということです。

単利は、当初の元本に対して利息を計算する方法です。複利は、利息を元本に組み入れ、その合計額に対して次の利息を計算する方法です。

たとえば100万円に年5%の利息が付く場合、

  • 単利なら、毎年5万円ずつ増える

  • 複利なら、1年後は105万円、2年後は110万2,500円になる

という違いが生まれます。

単利と複利の計算方法


銀行の定期預金には、実際に単利型と複利型があります。つまり、ここでは「どう計算するか」が明確に決まっています。

一方で、株式には「購入額に対して毎年5%の利息が付く」という契約はありません。 株価は企業業績、市場環境、金利、投資家の期待など、さまざまな要因で変動します。

もちろん、株価が100円から110円、翌年121円へと推移すれば、結果として複利計算と同じ形になります。その意味で、株式の運用成果を複利的と表現すること自体は間違いではありません。

ただし、その数字を生み出しているのは「複利という仕組み」そのものではなく、企業の利益成長や市場の評価です。

ここを混同しないことが大切です。

配当を受け取った瞬間に、資産が増えるわけではない

株式投資の複利効果としてよく語られるのが、「配当金を再投資すれば複利になる」という説明です。

たしかに、受け取った配当金で新たに株式を買えば、その追加購入分も将来の値動きや配当の対象になります。この意味で、再投資には大きな意味があります。

ただし、ここで重要なのは、配当金そのものが新たな価値を突然生み出すわけではないという点です。

たとえば、株価1,000円の企業が1株あたり50円の配当を出すとします。権利落ち日には、ほかの条件が同じなら、理論上はその50円分だけ株価が下がると考えられます。

つまり、

  • 権利落ち前:株式 1,000円

  • 権利落ち後:株式 950円+受取予定の配当 50円

というイメージです。

配当権利落ちの仕組み


税金や需給の影響を除けば、資産全体の価値は大きく変わっていません。

実際の株価は、市場環境や売買需給によって動くため、必ずしも配当額ぴったり下がるわけではありません。また、権利落ち日と配当金の支払日も異なります。

それでも本質は同じです。

配当を受け取ること自体で資産が突然増えるわけではなく、企業価値の一部が株主に移るだけです。

ですから、配当の多さだけで投資成果を判断するのは適切ではありません。大切なのは、配当を含めた資産全体でどう評価するかです。

高配当企業と成長企業では、利益の使い道が違う

企業が生み出した利益には、大きく分けて2つの使い道があります。

  1. 株主に還元する

  2. 事業のために再投資する

たとえば、同じ100億円の利益を上げた2社を考えてみましょう。

  • A社は、80億円を配当に回し、20億円を社内に残す

  • B社は、配当を出さず、100億円を社内に残す

一般に、成熟企業は安定したキャッシュフローを背景に株主還元を重視する傾向があります。

企業の利益配分の違い

一方、成長企業は設備投資、研究開発、新規事業などに資金を振り向けることが多くなります。

ただし、ここで注意したいのは、配当が少ない企業ほど優れているわけではないということです。

大切なのは、

社内に残した利益で、どれだけ将来の利益を生み出せるか

です。

内部留保が多いことと、再投資が上手いことは同じではありません。内部留保は会計上の利益の蓄積であり、その全額が自由に投資できる現金として積み上がっているとは限りません。

企業は、設備投資だけでなく、

  • 借入金の返済

  • 自社株買い

  • 運転資金の確保

など、さまざまな資本配分を行います。

つまり、見るべきなのは「どれだけ残したか」ではなく、残した利益をどれだけ効率的に活用できるかです。

企業の利益が増えても、株価が上がるとは限らない

ここも、株式投資を考えるうえで非常に重要な点です。

企業が利益を再投資し、その投資からさらに利益を生み、また再投資する。この循環が続けば、企業の事業には複利的な成長が起こり得ます。

しかし、企業の利益成長と、投資家が得るリターンは同じではありません。

たとえば、1株当たり利益(EPS)が100円から120円へ20%増えたとします。 一方で、市場の評価倍率であるPERが20倍から15倍に低下すれば、

  • もともとの株価:100円 × 20倍 = 2,000円

  • 1年後の株価:120円 × 15倍 = 1,800円

となり、1株当たり利益(EPS)は20%増えているにもかかわらず、株価は10%下落する計算です(配当などは考慮していません)。

これは極端な例ではありますが、非常に示唆的です。

株価は「今の利益」だけで決まるのではなく、将来への期待によっても大きく動きます。つまり、企業の業績が伸びても、すでに高い期待が織り込まれていれば、株価が思うように上がらないこともあります。

したがって、投資家にとって重要なのは、企業が利益を増やせるかどうかだけでなく、

  • どの価格で買うか

  • 市場がどれだけ期待しているか

  • その期待が将来どう変わるか

という点でもあります。

投資信託は「分配金なし=複利商品」なのか

投資信託についても、似た誤解が生じやすいと思います。

よく「分配金を出さない投資信託は複利効果が高い」と言われます。これは、ある意味では正しいのですが、説明としては少し単純化されています。

投資信託が分配金を支払うと、その原資はファンドの資産から出るため、原則として基準価額はその分下がります。したがって、分配金を受け取ったからといって、その瞬間に資産が増えたわけではありません。

一方、分配金を出さない投資信託では、配当や利息などをファンド内にとどめて運用を続けるため、その資金も次の運用に回ります。この意味で、再投資による複利的な成長を期待しやすい構造だと言えます。

ただし、それだけで資産が必ず増えるわけではありません。

ファンドが保有している株式や債券の価格が下がれば、基準価額も下がります。 ですから、分配金の有無だけではなく、

  • 分配金を含むトータルリターン

  • 運用コスト

  • 投資対象

  • リスク

まで含めて見る必要があります。

債券は「単利商品」なのか

債券についても、「株式は複利、債券は単利」という単純な分け方はできません。

たとえば固定利付の個人向け国債では、半年ごとに利子が支払われます。 その利子が自動的に元本へ組み込まれるわけではないため、商品の仕組みとしては複利型預金とは異なります。

しかし、受け取った利子を別の商品に再投資すれば、投資家の資産全体としては複利的な運用になります。

また、割引債(ゼロクーポン債)のように、利払いはなくても購入価格と償還額の差で収益を得る商品もあります。この場合、利回りを複利ベースで捉えることもあります。

つまり、金融商品ごとに

  • 利益がどのように発生するか

  • それが自動的に再投資されるのか

  • 投資家が別途再投資する必要があるのか

が異なります。

「年率5%」は、毎年5%ずつ増える約束ではない

ここが今回の記事の大きなポイントです。

「年率5%で運用」と聞くと、毎年安定的に5%ずつ増えるようなイメージを持ちやすいかもしれません。しかし、実際の投資ではそうではありません。

たとえば100万円を投資し、

  • 1年目に30%上昇

  • 2年目に20%下落

したとします。

このとき資産額は、

  • 1年目:130万円

  • 2年目:104万円

になります。

この2年間のリターンを単純平均すると、

(+30% − 20%)÷ 2 = +5%

です。

しかし、実際の資産は2年間で100万円から104万円になっただけです。 2年間の累積リターンは+4%、これを複利ベースで年率換算した幾何平均リターンは、約+1.98%となります。

平均5%と実際の運用成果


つまり、算術平均で5%といっても、実際に毎年5%ずつ増えたわけではないのです。

もし本当に毎年5%ずつ増えていたなら、100万円は2年後に110万2,500円になります。今回の104万円とは、はっきり差があります。

ここでお伝えしたいのは、「年率5%」という数字は、文脈によって意味が違うということです。

  • 各年の騰落率を単純平均した5%

  • 運用実績を複利ベースで年率換算した5%

  • 将来シミュレーションの前提として置いた5%

これらは同じではありません。

資産形成のシミュレーションで使う「年率5%」も、一定の仮定を置いて将来価値を計算したものであり、毎年5%の上昇や将来の成果を約束するものではありません。

まとめ|「複利で増える」より、「何が利益を生むのか」を考える

複利は、資産形成を考えるうえで非常に重要な概念です。ただし、それを「魔法のように自動で増える仕組み」と捉えてしまうと、本質を見失います。

株式であれば、

  • 企業がどのように利益を生み

  • その利益をどう配分し

  • 市場がそれをどう評価するか

が重要です。

投資信託であれば、

  • どの資産に投資しているか

  • どのようなコストがかかるか

  • 分配金を含めたトータルでどう成果が出るか

を見る必要があります。

債券であれば、

  • 利子の受け取り方

  • 再投資のしやすさ

  • 金利環境との関係

も重要です。

長期投資には意味があります。企業の成長に長く参加できること、収益を再投資する時間を確保できること、短期売買を繰り返さずに済むことなど、多くの利点があります。

ただし、長く保有すれば自動的にお金が増えるわけではありません。

私が大切だと考えるのは、金融商品の表面的な数字だけではなく、その利益が何によって生まれているのかを理解することです。

「複利でいくら増えるか」の前に、「その利益はどこから生まれるのか」を考える。

その視点を持つことが、納得できる資産形成につながるのではないでしょうか。 〈ご案内とご注意〉本記事は、株式・投資信託・債券等の金融商品の仕組みや、単利・複利、資産運用における収益とリスクについて理解を深めていただくことを目的とした情報提供資料であり、特定の金融商品の売買を勧誘・推奨するものではありません。また、将来の市場価格や運用成果、利益を保証するものではありません。記事内の数値やシミュレーションは、仕組みを説明するための仮定に基づくものであり、実際の運用成果とは異なる場合があります。内容は信頼できると考えられる資料に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。金融商品には価格変動や信用状況等によって損失が生じるリスクがあり、商品によっては元本割れとなる場合があります。実際の資産運用や投資判断にあたっては、ご自身の生活状況や資産状況、投資目的、リスク許容度等を踏まえ、最新の情報や商品の契約条件等をご確認いただいたうえで、最終的にはご自身の責任にてご判断くださいますようお願い申し上げます。

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