top of page
Finfinity_logo

SNSで人気の投資先を買いたくなる理由|群集心理を考える

執筆者の写真: 根本 寛朗
根本 寛朗
7 分前
読了時間: 10分
SNSで人気の投資先を買いたくなる理由|群集心理を考える

SNSを見ていると、ある時期から突然、同じ投資先を何度も目にするようになることがあります。

S&P500。

NASDAQ100。

インド株。

高配当株。

半導体。

金。

暗号資産。

その時々によって対象は変わります。 最初は特に興味がなかったのに、

何度も目にする。

「買ってよかった」という投稿を見る。

資産が増えた画面を見る。

有名な人も紹介している。

コメント欄でも肯定的な意見が多い。

すると、だんだん、

「自分も持っておいた方がいいのではないか」

と思うようになります。

私は、これは意思が弱いから起きることではないと思っています。

人間として、かなり自然な反応です。

行動ファイナンスでは、こうした投資行動の背景に、「群集行動・群集心理(Herding)」をはじめとする複数の心理が働いていると考えます。

「みんなが買っている」は強い情報になる

自分がよく知らないレストランを選ぶとき、

誰も入っていない店と、

行列ができている店。

どちらが安心でしょうか。

多くの人は、行列のできている店を選びたくなると思います。

自分には十分な情報がなくても、

「これだけ多くの人が選んでいるのだから、何か理由があるはず」

と考えるからです。

これは「社会的証明(Social Proof)」と呼ばれる心理にも近いものです。

周囲の人が同じ行動をしていると、その行動が正しいように感じる。

投資でも同じことが起こります。

自分一人で企業分析や経済分析をするのは大変です。

しかし、

多くの人が買っている。

SNSで話題になっている。

有名投資家も持っている。

となれば、

「これだけ多くの人が支持しているなら間違いではないだろう」

と感じやすくなります。

これが群集行動・群集心理です。

人間社会では、周囲を参考にすることは非常に効率的です。

ただ、金融市場では少し注意が必要です。

投資では「人気」が価格を変える

レストランの場合、

人気店だからおいしい

ということはあるかもしれません。

でも金融資産では、

人気が高まること自体が価格を押し上げます。

つまり、

良いから人気なのか。

人気だから価格が上がったのか。

その両方なのか。

を分けて考える必要があります。

例えば、ある企業の利益が大きく成長している。

将来性も高い。

だから投資家が集まり、株価が上昇する。

ここまでは自然です。

しかし人気がさらに高まり、

将来の成長を大きく上回る期待まで株価に織り込まれれば、

良い企業であることと、良い投資対象であることは別

という問題が出てきます。

企業が素晴らしくても、

価格が高すぎれば将来リターンが低くなる可能性があります。

私は、SNSで人気の投資先を見るときには、

「良い資産か」

だけでなく、

「その良さは、すでに価格にどこまで織り込まれているのか」

も考えたいと思っています。

何度も見るだけで「良さそう」に感じる

SNSでは、同じテーマを何度も目にします。

一度、

「インド株」

について検索する。

関連投稿を見る。

いいねを押す。

動画を見る。

すると、その後も似た情報を目にするようになる。

気がつくと、

インド株について肯定的な投稿ばかり見ている。

すると、

「世の中ではみんなインド株に注目している」

ように感じるかもしれません。

ここには「単純接触効果(Mere Exposure Effect)」も関係します。

人は、何度も接触したものに親しみや好感を持ちやすい。

投資でも、

聞いたことのない商品より、

毎日のように名前を見る商品の方が安心して感じることがあります。

ただ、

よく見ることと、安全であることは別です。

何度も聞いた銘柄名が、いつの間にか「よく知っている投資先」に変わってしまう。

私は、ここは少し注意した方がいいと思っています。

目立つ成功例ほど「普通」に見える

SNSでは、

100万円が150万円になった。

個別株が2倍になった。

暗号資産が大きく上昇した。

こういう投稿は目立ちます。

人の記憶にも残ります。

一方、

100万円投資して99万円。

10年間普通に積み立てている。

今年も特に何も起きなかった。

という投稿は、それほど注目されません。

ここで働くのが「利用可能性ヒューリスティック(Availability Heuristic)」です。

人は、思い出しやすい情報や、目につきやすい事例を、実際よりも頻繁に起きていると判断しやすい。

SNSで、

「株で資産が2倍になった」

という投稿を10回見る。

すると、

「みんな儲かっている」

ように感じます。

でも、その投稿の裏には、

うまくいかなかった人。

普通の結果だった人。

途中で売却した人。

投稿しなかった人。

がいます。

見えている人が、投資家全体を代表しているとは限りません。

SNSを使って投資判断をするときには、ここを忘れない方がいいと思っています。

「自分だけ乗り遅れている」が判断を変える

さらに強いのが、「FOMO・取り残されることへの不安(Fear of Missing Out)」です。

例えば、

友人が投資した株が50%上昇した。

SNSでも同じ銘柄で利益を出した人がいる。

自分は持っていない。

すると、実際には何も損をしていないのに、

損をしたような感覚

になることがあります。

500万円が500万円のままでも、

友人が500万円を750万円にしているのを見ると、

「250万円取り逃した」

と感じてしまう。

でも、それは損失ではありません。

あくまでも、

「買っていれば得られたかもしれない利益」

です。

ところが心理的には、

「今度こそ乗り遅れたくない」

という気持ちが強くなる。

そして高値でも買う。

私は、SNS時代の投資では、このFOMOはかなり大きいと思っています。

最近上がっているものほど、さらに魅力的に見える

ここに「近時性バイアス(Recency Bias)」も重なります。

最近起きたことを、今後も続くと考えやすい心理です。

ある国の株式が5年間好調だった。

すると、

「今後もこの国が一番伸びる」

と感じやすくなる。

反対に長期間低迷している資産は、

「もう上がらない」

ように感じます。

でも投資では、

過去に上がったことと、

これから高いリターンが得られることは別です。

むしろ価格が上昇した結果、バリュエーションが高くなっている可能性もあります。

私は、

「最近上がっている」は事実、「だから今後も上がる」は予想

と分けて考えるようにしています。

買いたいという結論が先にあることもある

例えば、SNSで何度もインド株を見る。

だんだん欲しくなる。

でも、

「上がっているから買いたい」

だけでは、投資理由として少し弱い。

そこで調べ始める。

人口が増えている。

GDPが伸びている。

中間所得層が拡大している。

IT産業も強い。

すると、

「やっぱりインド株は良い」

という結論になります。

もちろん、本当に合理的な分析をしている場合もあります。

ただ、気をつけたいのは、

買いたいという結論が先にあり、それを支持する情報を後から集めている可能性

です。

これが「確証バイアス(Confirmation Bias)」です。

人は、自分の考えに合う情報を集めやすく、

反対する情報を軽視しやすい。

だから私は、新しい投資先が気になったときには、

「買う理由」

だけでなく、

「買わない理由」も意識して探す

ようにした方がいいと思っています。

例えば、

成長率は高いが株価も割高ではないか。 為替リスクはどうか。

政治リスクはどうか。

すでにポートフォリオに同じエクスポージャーがないか。

高成長が株主リターンにつながるのか。

反対側の材料まで見る。

そのうえで買うのであれば、投資判断として一段深くなります。

「みんな儲かっている」は詐欺にも使われる

群集行動・群集心理は、詐欺にも利用されます。

LINEなどの投資グループに入る。

すると、

「先生の推奨銘柄で20万円儲かりました」

「今日も利益が出ました」

という投稿が次々に流れる。

周りの人が全員儲かっているように見える。

すると、

「自分もやってみよう」

と思います。

でも、その人たちが本当に一般の投資家なのか。

同じ詐欺グループが作ったアカウントなのか。

画面を見ている側には分かりません。

これは極端な例ですが、 通常のSNSでも、

周囲の成功談が自分の投資判断を強くする

という心理は同じです。

多数の人が言っている。

多くの人が買っている。

成功している人もいる。

それ自体は、投資対象の安全性や将来リターンを保証しません。

SNSを見るな、ではない

ここまで書くと、

「SNSで投資情報を見るのはやめた方がいい」

という話に聞こえるかもしれません。

私はそうは思いません。

SNSには有益な情報もたくさんあります。

知らなかった企業を知る。

新しい制度を知る。

経済ニュースを知る。

専門家の考え方に触れる。

情報収集の入口としては、とても便利です。

問題は、

情報を知ることと、そのまま投資判断にすることを同じにしてしまうこと

です。

SNSで新しい投資先を知った。

そこから、

一次情報を見る。

決算を見る。

指数の構成を見る。

信託報酬を見る。

バリュエーションを見る。

自分のポートフォリオとの重複を見る。

どのようなリスクがあるか調べる。

そのうえで判断する。

私は、

SNSは答えをもらう場所ではなく、調べるきっかけをもらう場所

くらいがちょうどいいと思っています。

「SNSを見ていなくても買うか?」

気になる投資先が出てきたとき、

私は一度、

「もしSNSで一度もこの投資先を見ていなかったとしても、自分は買うだろうか?」

と考えてみるのもいいと思っています。

この資産を入れる目的は何か。

期待するリターンは何か。

どのリスクを取るのか。

すでに持っている資産との相関はどうか。

どの程度下落しても保有できるか。

なぜ今買うのか。

これに答えられるなら、

SNSで人気だったこととは別に、自分なりの投資理由があります。

逆に、

「みんな持っているから」

「最近上がっているから」

「有名な人が勧めているから」

しか出てこないのであれば、

一度立ち止まってもいいと思います。

多数派と反対なら正しい、でもない

もう一つ注意したいところです。

群集心理に流されるな。

だから、

「みんなが買っているなら、自分は売ろう」

となる。

これも違います。

多数派だから間違い。

少数派だから正しい。

ではありません。

人気のある投資先が、その後も長期間上昇することは当然あります。

大切なのは、

他人が買っていることを、自分が買う理由にしないこと

です。

多数派と同じ結論でもいい。

違う結論でもいい。

ただ、

自分の目的。

自分の投資期間。

自分のリスク許容度。

自分のポートフォリオ。

から判断する。

私はそこが一番大切だと思っています。

資産運用で持つべきなのは「人気の商品」ではなく「自分の理由」

SNSでは、今日も新しい投資先が話題になります。

来年になれば、また別の商品が人気になっているかもしれません。

そのたびに乗り換えていたら、

自分の資産運用なのに、

投資方針を決めているのはSNS

ということになります。

群集行動・群集心理。

社会的証明。

FOMO・取り残されることへの不安。

利用可能性ヒューリスティック。

近時性バイアス。

確証バイアス。

名前は難しく見えますが、どれも人間として自然な心理です。

重要なのは、

こうした心理が自分にも働くことを知っておくこと。

心理そのものをなくす必要はありません。

なくすことも難しいと思います。

ただ、

「今、自分はFOMOで買いたくなっていないか」

「成功事例ばかり見ていないか」

「買う理由だけ集めていないか」

と、一度自分の判断を外から見ることはできます。

資産運用は人気投票ではありません。

私は、

「この商品が人気だから買う」

ではなく、

「自分のポートフォリオに必要だから買う」

という順番にしたいと思っています。

周りが何を買っているかより、

自分がなぜ持っているのか。

そこを説明できるポートフォリオの方が、相場が大きく動いたときにも続けやすいと思っています。

コメント


bottom of page